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〈特集〉地域を支える商店街(1)

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神奈川県秦野市

買い物や人の交流、地域のイベント開催など、市民の暮らしを支える商店街。地域の個性あふれる小田急線4駅の特色を生かしながら、街を盛り上げようと趣向を凝らす商人たちが「自慢の商店街」を語る。

●鶴巻温泉駅エリア
◇猪鹿町(いのしかちょう)プロジェクト
弘法山からのハイキング帰りに、ほっと一息つける名湯がある鶴巻地区。このエリアの商店街では近年、新たな「街の顔」を使ったプロジェクトが始まった。「ジビエの食べられる街」という看板を掲げ、地域が一体となって観光客を迎え入れる。肉の仕入れを担う鶴巻温泉南町商店会・鶴巻温泉活性化協議会の川上拓郎会長(57歳)は、「温泉に入ると、おいしいご飯が食べたくなるでしょ」と笑顔で話す。最近では、耳にする機会が増えた「ジビエ」。「この辺りの温泉旅館では、昔から名物として『しし鍋』を振る舞っていたんですよ」。その伝統を焼肉やイタリアンにアレンジしたのが始まりだった。
「初めての人にも、気軽に食べてもらいたくてね」。徐々にジビエ料理の提供店が増える中で、市内に流通拠点がなかったことから、昨年7月、卸売業を立ち上げた。大型冷凍庫を自社に導入し、鶴巻地区にある飲食店13店舗に滞りなく搬入できる仕組みを確立した。
にぎわいをつくる上で鍵となるのが、観光客の存在。登山や温泉に多くの人が行き来するが、「街歩きにはつながっていないんですよね」と課題を挙げる。そうした状況を打開するため、新たなメニューや土産に最適なレトルト商品の開発などにも動き出している。「多くの人の目に留まればと思って。軌道に乗り出した今がチャンスなんです」と意欲を見せる。
令和2年から始まったこの取り組み。「まだまだ成長途中です」と謙遜するが、市の祭りやイベントへの出店など、他の地域の商店街との関わりも増えている。「四つのエリアの力が集まれば、市の魅力がもっと広がっていくと思います」。ジビエが生んだ新たな風が、秦野にこれまで以上の活気を呼び起こすはずだ。


◎冷凍された猪肉を手に取る川上会長。流通の安定化を実現した


◎メニューのアイデアを話し合う川上会長と白髭食堂店主の平田真一さん(写真右)

●東海大学前駅エリア
◇若人×商人 = 無限大
東海大学のお膝元、約2万人の学生が行き交う「若者の街」。「昔から学生と協力して街を盛り上げてきました」と話すのは、約80店舗から成る東海大学駅前商店会協同組合の永島等理事長(69歳・北矢名)だ。同協同組合は、今年6月、関東商工会議所連合会の「ベストアクション賞」を受賞。昨年10月に、学生と力を合わせて新たな祭りを開催したことが、地域の経済活性化への取り組みとして評価された。「一人一人が積極的に動いてくれたからこその、大成功です」と誇らしげに喜ぶ。
その祭りとは、東海大学の大学祭「建学祭」のプレイベントとして、学生会と共同開催した「おおね秋祭り」。駅前広場は、学生によるパフォーマンスや商店街が出す露店でにぎわった。今年は開催日を2日に増やし、地元小・中学生のダンスなどが加わったことで、家族連れなどが多く訪れ、昨年よりも大きな盛り上がりを見せた。
顧客の大半が学生というのが商店街の特徴だが、悩みになることもある。「コロナ禍で学生が大学に来なくなったのは痛手でした」と振り返る。その難局を乗り越え、街には学生たちの笑顔が戻ってきた。今ではイベントの他、清掃活動や花植えにも協力してくれるという。「地域の活性化に学生は欠かせないですね」
学生の存在は、商店街のデジタル化への後押しともなる。市が導入に向けて検討を進める電子地域通貨も、「スマホ世代には、利用のハードルが低いはず」と期待を寄せる。学生の力と掛け合って無限に広がる可能性を秘めた商店街の、今後の取り組みに目が離せない。


◎永島理事長(写真右)と東海大学湘南学生会の役員。若者の意見が新たな企画のヒントに


◎学生たちも地域の人に混ざって盆踊り。祭りが世代を超えた交流の場になった

       

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