笑顔でもぐもぐと給食を食べる生徒たち。昨年12月から始まった「中学校完全給食」での一場面だ。
給食の提供だけではない、秦野の中学校給食に込められた思いや歩みを紹介する。
●注目される秦野スタイル
共働き世帯の増加など社会環境の変化に伴い、弁当を準備することを負担に感じる家庭が増えるなど、子供たちを取り巻く「食」の事情も変化している。そうした中、食育や子育て支援といった観点から始まったのが、「中学校給食」だ。生徒や保護者の意見を積極的に取り入れながら、バランスよく栄養を取れる「完全給食」や、食育と地産地消を通じた健全な心身の育成など、一貫して「秦野らしい」中学校給食の実現にこだわった。
その過程では、事業者を選ぶ段階から秦野独自の工夫を凝らした。市が目指す「質の高い中学校給食」を、民間事業者の高い技術力や創意工夫を生かして実現したい思いがあったからだ。市は具体的な条件を示した中で、設計や建設、調理運営といった全ての工程を一括発注し、それぞれの専門事業者がチームを組んで受注する秦野独自の方式とした。そうした新しい視点が、みんなの思いが詰まった学校給食センターの早期実現につながった。
秦野独自の「公民連携方式」は、20年間という長期間にわたる中学校給食事業の安定運営を可能とし、他の方式と比較して、約26億円もの事業費削減につながった。また、専門事業者のアイデアが随所に生かされた学校給食センターは、将来的に学校給食以外の食にも対応できる機能も有している。
今後も、事業パートナーであるハーベストネクストグループと連携し、時代や社会のニーズに合わせてさらなる充実に努めていく。
●キーワードは「共に」
中学校給食を進める上で大切にしてきたテーマが「共に」だ。保護者や生徒と市による意見交換、市と事業者による施設の設計などの話し合い、事業者と地元農家での地産地消のためにできる工夫など、さまざまな分野・立場で共につくり上げた。
例えば、地場野菜を使用するための工夫を市と農家、ハーベストが共に検討。前日に納めることができる野菜専用の冷蔵庫を導入し、野菜を洗うシンクを通常より多く設置したり、食材の規格を広く設計したりすることで、農家の手間などの負担を軽くしたほか、運営者の効率的な食材管理につなげることができた。子供たちに地場野菜に興味を抱いてもらうことで、日々の食事に新しい食の選択肢を広げる、食育の思いも実現できた。「共に」を大切にしたからこその成果だ。
こうした食育に対する取り組みを、市民一人一人に広げるプロジェクトも進めている。東海大学や市PTA連絡協議会と市が連携して取り組む「はだのGOFUN(ごはん)プロジェクト」だ。中学校給食のレシピの公開や、生徒からのオリジナル献立の募集など、具体的な検討も始まっている。
保護者からは、「朝の時間にゆとりができた」と喜ぶ声が届いた。子供たちと共に食を楽しみ考える時間を生み出すことにつながった。これからもはだのっ子を中心に、健康や地域社会を支える「共に」を第一にした「秦野スタイル」を積み重ねていく。
◆いろいろあります 給食のカタチ
問い合わせ:学校教育課
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