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特集「優しく広がる 子育ての輪」(3)

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神奈川県秦野市

■居場所をつくる
放課後や休日だけでなく、学校へ通えなくなった子供とそれを支える親など、今、あらゆる子育て世帯の「居場所」が求められている。
市内では、全ての子供たちの日常に寄り添い、健やかな成長を見守る人たちによる活動の輪が広がっている。辛いとき、寂しいとき、悩んでいるとき、この街ならきっと誰かが手を差し伸べてくれる。

◯子育てを支える地域の輪 はだのっ子未来応援サポーター
市ホームページで、地域での遊びや学習支援など、さまざまな活動を行う個人・団体・事業者を紹介しています。
【URL】https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1726648513629/index.html

問い合わせ:こども政策課
【電話】86-3460

◯たまりば
・みんなで作って食べて、多世代交流
・遊び相手は、「地域のお姉ちゃん」
・みんなで花火すごく楽しい
・楽しい「えんにち」も開催

◎Photo
1 コミュニティ食堂は、周りの家庭と合同の「特別な食卓」
2 食器洗いはボランティアの高校生が先導
3 遊びの時間も世代の垣根を越える
4 大人に教わりながらの調理。多い日には50人分も作るという
5 小学生と高校生の「女子会」。食事とともに会話も弾む
6 千村児童室での「えんにち」では、手持ち花火が配られた
7 大人や高校生に見守られて「ヨーヨーすくい」
8 昔ながらの駄菓子屋を再現
※詳細は広報紙4~5ページをご覧ください。

《「子供の声が聞こえるっていいね」ってそんな風に言われる街を、ここから。》

たまりば 磯辺友里代表

夕方の公民館に楽しげな声が響く。よく見ると、そこでは未就学児から大人まで、さまざまな世代が一緒になって遊んでいる。「今日の学校はどうだったかな」。大勢の中心で周囲に声を掛けているのは、たまりばの磯辺代表。渋沢地区や千村地区を拠点に、コミュニティ食堂や子供向けの駄菓子屋、地場産品のマルシェなど、子供を中心に地域の人が集まれる場所をつくっている。
たまりばができたのは約8年前。磯辺代表は、それ以前にも県内各地で子供の居場所づくりに取り組むNPO法人で活動していたが、当時小学1年生だった次男が学校へ通うのをためらうようになったことをきっかけに独立し、市内での活動を始めた。「人と会わないことで、子供が社会から取り残されてしまわないか不安でした」と振り返る。そのような中、周囲の母親らとの会話で、学校へ行っていない子供が意外にも多いことを知り、居場所づくりの必要性を感じたという。
「初めから『地域で』という部分にこだわりがありました」と磯辺代表。共働き世帯が増え、核家族化が進むことで、少なくなってきている「地域みんなでの子育て」を取り戻したいと語る。何でも家庭内で完結しようとすると、親は苦しくなって、周りを攻撃したくなってしまう。その結果、周りの人間は、距離を取るようになってしまうという。「昔みたいに近所の人が『子供は見ておくから行っておいで』みたいな助け合いがあると、心にゆとりが生まれるんですけどね」
親の心に余裕がないと、子供は辛いことがあっても打ち明けづらい。そうならないよう、たまりばは、親同士が料理やイベントの運営をしながら、「困った」や「助けて」を普段から言える関係性づくりの場になっている。「大人が楽しいことをすれば、子供たちはもっと輝くと思います」。実際に、不登校に悩む親子が、参加するうちに元気になる姿を見てきたという。
運営仲間が「駄菓子屋をやっているからおいで」と地域の子供を誘い、参加者が増えてきているというたまりば。そういった「おせっかいが焼ける世の中」が理想だと磯辺代表は話す。「同じような活動をする人が増えれば、親も子もさらに暮らしやすい街になるはずです」

◯こだぬき会
・子供も大人も一緒に大自然のリラックスタイム
・自然の中にあるものは全部遊具
・自然の楽しみ方は年上の子がお手本

◎Photo
1 「はだのプレーパーク」の川遊び。大人が多いからこそ思い切り遊べる
2 自然のブランコは、乗りこなすのに一苦労
3 四十八瀬川の清流を全身で感じる
4 水生生物の採集に没頭する子供も
5 プールとは違う自然の水に大興奮
6 川底が深い場所でダイブ。1人が始めると次々にまねをし始める
7 ベテラン参加者が教える「ささ舟作り」
8 子供たちが集めたセミの抜け殻。怖がる子供はほとんどいない
※詳細は広報紙4~5ページをご覧ください。

《「群れで子育て」が私の出した最適解。》

こだぬき会 西村悦子代表

「生き生きとした子供時代を送ってほしいんです」。木漏れ日がきれいな自然の中で、優しくほほ笑むのは、こだぬき会の西村代表。親子で川遊びやたき火が楽しめる「はだのプレーパーク」や、不登校児童向けの「はだの自然スクール」など、市内で小学生までの子供が自然の中で育つ場を提供している。
自らも島根県の大自然で幼少期を過ごしたという西村代表。12年前、「自然の中で子育てがしたい」と川崎市から夫の実家がある秦野市へ移住してきた。程なくして立ち上げたのが、こだぬき会だ。当初はハイキングなどで1年を通して自然と触れ合う教室だけを運営していたが、転機はコロナ禍。それまで空き地で遊んでいた子供たちの姿は消え、ひょっこりと家に遊びに訪れる友人も現れなくなったという。平成時代から徐々にボール遊びができる場所が減ってきたことなども起因したのかもしれないが、コロナ禍が明けても、子供の遊び場がないのが目についたと振り返る。「できる限り規制のない場所で遊んでほしい」と願って始めたのが、「はだのプレーパーク」だった。
こだぬき会が大切にしているのは、時間、仲間、空間、隙間という四つの「間」。近年は、習い事などで多忙な子供が多い。たまに放課後に空いた時間があっても、遊べる相手や場所が見つからないという声も聞くそうだ。「休日だけでも、良い仲間たちとゆったりとした時間を過ごしてもらえたらなって」
近年、子育てが孤立化していると訴える西村代表。自身も、つてのない川崎市で暮らしていた頃は、助けを求める相手もおらず苦しんだと話す。解決策として生み出したのが、「群れで子育て」。大自然の中で、みんなで遊ぶ。常に誰かの目があって、子供は子供同士で遊び、大人は他の大人と談笑する。「みんなでつながって、助け合って子育てがしたいです」
活動を通して元気になった参加者からの感謝の言葉に勇気をもらっているという西村代表。「子育てって本当は楽しいもの。子育てが宝物になる手伝いがしたいです」と力を込める。市内にいる子育て世帯の皆さん。少しでも疲れを感じたときは、秦野ならではの自然の中で、〝ゆったり子育て〟を楽しんでみては。

◯参加者の声
《たまりば》
・人見知りだった自分が、誰とでも気軽に話せるようになりました。人との関わりが楽しいです。
原田はなさん

・大人たちがみんな優しいし、知らないことを教えてくれます。料理のテクニックも上がります。
上田苺花さん

・ここに来れば、いつでも子供たちを友達に会わせられる。ありがたい場所です。
岡部典子さん
渚さん
岬さん
旭さん

《こだぬき会》
・常に誰かが見ているので、安全も確保できるし、良い自然体験スポットを知ることができてうれしいです。
石川友希子さん
雅さん

・学校へ通えている子供も通えていない子供も、みんなが仲良くしていて、心地良い居場所です。
坂野智哉さん

       

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