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特集「優しく広がる 子育ての輪」(1)

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神奈川県秦野市

■母に寄り添う
「安心して産み育てられる環境づくり」を進める本市。妊娠や出産、乳児期の育児を支えることは、切れ目のない子育て支援につながっていく第一歩だ。ママたちの不安や悩みに手を差し伸べる、2人の心強い味方に話を聞いた。

◯「地元で産みたい」を支えたい。


産婦人科アクアベルクリニック
柏浦葉子看護師長

「オギャー、オギャー」。元気な産声が上がるのは、市内で唯一分娩(ぶんべん)ができる産科有床診療所「アクアベルクリニック」。おととし11月から、800を超える命がここで誕生してきた。開院までの約8カ月間、それまで取り扱いのあった医療機関が分娩業務を休止し、市内では出産できない状態が続いていた。「家族や知り合いがいる地元で産めることは、妊婦さんにとって非常に心強いと思います」。そう語るのは、アクアベルクリニックの柏浦看護師長。同院には、里帰り出産で、東京や横浜から訪れる妊婦もいるという。
「当院では、どんな方も、どんな希望も受け入れられるよう努めています」。陣痛や産後の体調に不安があるときは、専門の医師や充実した設備を整えた、計画無痛分娩体制でサポートする。心の不調を抱えた方は、特に慎重な対応が必要。柏浦看護師長は、否定せずに褒めることを心掛けている。「お産は一人一人違うもの。他人と比べず、自分に自信を持ってもらうことが重要です」。その他、看護師や医師の声が反映された入院中の食事も好評だ。
今年1~7月のアクアベルクリニックでの出生数は、昨年の212人から361人に増えている。初産で安心できたからと、2人目の出産に訪れた方もいるという。出産は子育てのスタート地点。柏浦看護師長は、「満足してお産を終えることは、その後の子育てや子供を持つことが楽しいと思えるきっかけになるんです」と話す。同院では、受け入れ体制をより充実させるため、産前産後のケアも実施する方針だ。妊婦だけでなく、産後のママやパパも気軽に立ち寄れる心のよりどころを目指し、今日も柏浦看護師長たちは、命の現場に向き合っている。


1 充実した医療機器を備えた分娩室。より高度な処置が必要な場合は、東海大学医学部付属病院と連携し、母子の命を守る


2 病室は全て、周りを気にせずリラックスできる個室。宿泊型の産後ケアでも利用できる

◯育児はみんな不安になるもの。私たちが全力でサポートします。


こども健康部こども家庭支援課
井上尚子技幹

訪れたママたちの気持ちが温かくなるように。そんな思いが込められた、本市の産後ケア事業「産後ゆったりルーム ぽっかぽか」。秦野赤十字病院内で、赤ちゃんとのコミュニケーションの取り方などが学べる憩いの場だ。スタッフも保育士から助産師まで幅広く、何でも相談できる。「肌のケアや洋服の選び方など、特に初産の方は、悩みが尽きないものです」と話すのは、保健師の井上技幹。毎回実施する体重測定も欠かせない取り組みの一つで、迷いやすい授乳量を決めるのに一役買っているという。
1回に7~8組の母子が参加するぽっかぽか。同じくらいの月齢の子を持つママ同士だからこそ、親身になって話題や不安を共有できる。「まだ話せない赤ちゃんと長くいるので、誰かとおしゃべりしたいっていう方が多いんですよ」。参加後にSNSでグループを作り、情報交換を続けるママたちも多いんだそう。一通りのプログラムを終えた後は、子供を預けて食事を取れるランチタイム。参加者とほぼ同数のスタッフが対応するため、安心して預けられるのもぽっかぽかならではの強みだ。井上技幹は、「心のケアのためには、赤ちゃんと一度離れて気を休めることも大切なんです」と呼び掛ける。
スタッフの多くは、市が実施する他の母子保健事業にも携わっている。その一つである「新生児家庭訪問」で声を掛け、ぽっかぽかに参加した方もいるという。「顔見知りがいれば、その後の子育て相談や健診にも行きやすいと思うんです」。一時期だけの支援ではなく、子供の成長に合わせて、ママたちを支え続けたいと力を込める井上技幹。「『小学生になりました』と、顔を見せに来てくれた親子もいました。一緒に成長を喜べるのはうれしいですね」。どんなに小さな悩みでもいい。誰かに話したい、家族以外にも相談相手が欲しい、そんなあなたを、ぽっかぽかは温かく迎え入れる。


◎マッサージをしながら話し掛けると、ママも赤ちゃんも笑顔に

       

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