秦野盆地の中心を蛇行して流れる葛葉川。周辺には緑地が広がり、独自の生態系を維持している。施設がオープンして27年。魅力が詰まったこの場所は、自然を愛するたくさんの人たちの思いによって保たれてきた。
1 くずはの家。この春外観もリニューアル
2 青く光る発光生物ニッポンヒラタキノコバエの幼虫。県内では初めて発見された
3 緑地面積は約17ヘクタール。東京ドーム約4個分の広さ
4 新たに造られた憩いの場。地面には県内初、伐採した竹を活用した粉末が
5 河原から見える地層。最も下の層は約12万~13万年前のものだという
中心市街地から北に約1キロ、閑静な住宅街を抜けると、そこには壮大な緑の景色が広がる。「生き物にとってみたら、砂漠の中にあるオアシスのような場所なんだよ」。にこやかに話すのは、自然観察会など、生き物や環境について学ぶイベントを開催している、くずはの家の高橋所長。秦野ガス・ネイチャーパークくずは(くずはの広場)は、約700種類の樹木や草花、約600種類の昆虫、約90種類の野鳥、14種類の哺乳類など、季節ごとに異なる動植物を間近で観察できることが魅力だ。
「豊かな自然が育まれたのは、地殻変動が関係しているんだよ」。この一帯は、川を中心にV字型に崖が切り立つ峡谷の形を取っている。約5万年前、川を横切る秦野断層の活動により下流側が隆起し、現在の地形に。傾斜のきつい川周辺は開発の手が入らず緑が残り、生き物にとってのシェルターとなった。「草地に雑木林、湿地、河原︱。色々な環境があるのが魅力だよね」。葛葉川には、魚やカニの他、ヤゴなどの水生昆虫が生息し、くずはの家の周辺には、イネ科の植物や日当たりを好む草が生え、バッタなどの昆虫や、それを餌とするクモや野鳥が集まってくる。「気になる生き物を見つけたら、指導員に何でも聞いてね」。くずはの家には、各ジャンルに精通したスタッフが常駐しており、ひとたび話を聞けば新しい学びを得られるに違いない。
魅力あふれる自然環境は、緑地に関わる多くの人たちの懸命な努力によって守られてきた。昭和62年に、県内の失われゆく緑地保全に取り組む「かながわのナショナル・トラスト第1号」に指定されて以来、散策路の整備や草取り、普及啓発を目的としたイベントの運営など、施設スタッフやボランティアによる取り組みが、今日まで続いている。精力的な活動が評価され、おととし、生物多様性が保全されている区域として環境省の「自然共生サイト」に認定。国際データベースに登録され、「葛葉緑地」の名が世界のステージに立った。
「『初めて来たけれどいい場所だね』なんてよく言われるんだ」と高橋所長。広場に足を踏み入れれば、魅力が伝わるはずだと信じている。新たな舗装や、保たれてきた生物多様性が国際的に認知されるなど、近年話題が絶えない「秦野ガス・ネイチャーパークくずは」。これを機に自然や生き物に興味を持つ人を高橋所長たちは待ち望んでいる。
くずはの家 高橋孝洋所長(67歳・尾尻)
問い合わせ:くずはの家
【電話】84-7874