●日本酒のルーツ“どぶろく“を自分たちの手で
酒造りで農地の再生をー。
一見、関連がなさそうなこの試みに取り組むのは、表丹沢の登山口、大倉地区で農家レストランを営むNPO法人四十八瀬川自然村。県内唯一の「どぶろく特区」に認定された本市で、もろみを搾らず、そのまま味わう酒、いわゆる「どぶろく」を造っている。近年、増加傾向にあった荒廃農地を活用して、原料の酒米を平成14(2002)年から作り始めた。小野代表理事は、「自分たちで作ったお米の酒が飲んでみたい。そんな思いがきっかけの一つだね」と振り返る。多くの歳月を経て実現したどぶろく造り。荒れた土地の耕運や特区の認定に向けた働き掛けなど、多くの苦労があったという。「また飲みたいね」といった地域の人や登山客からの反響の声に喜びもひとしおだ。
生きた酵母の影響で日々変化する風味と適度な酸味、シュワッとした炭酸が特長のどぶろく。飲む人が増えれば、酒米の生産も盛んになり、農地の活性化にもつながっていく。水田は、里山やそこにすむホタルなど、生き物の保全にも必要なんだそう。「市内外から新規参入者が増えて、飲み比べができれば、盛り上がると思うよ」。日本酒に次ぐ新たな名産品となるよう、色や味の変化にも挑戦している小野さん。世界に誇る日本の酒造りを秦野の地から発信していく。
◆どぶろく特区とは
酒税法に基づく最低製造数量(年間6キロリットル)に満たなくても、農家レストランなどを営む農業者が酒類製造免許を取得して、どぶろくを造ることができます。本市は令和3年11月に「秦野名水どぶろく特区」として、内閣府から認定を受けました。
◎醸造・提供が認められた「秦野どぶろく家」