高く抜けた天井と、通路が広く取られた開放的な空間。窓からは木漏れ日が差し込み、丹沢の山並みが望める。心地よい静けさの中で本を開けば、まるで大自然の中で読書をしているよう。山小屋をイメージして建てられた図書館は、11月1日で開館40周年を迎える。今では約51万冊を所蔵するこの施設の歴史は、市民と、そこで働くスタッフの思いで培われてきた。
「移転前は、車2台しか駐車できないような、こぢんまりとした場所だったと聞いています」。書棚を整えながら語るのは、司書の古田栞主事。同館は、かつて寿町の旧市庁舎の中に置かれていたが、市民からの「多くの本に触れたい」という声を受け、昭和60(1985)年に現在の場所に新設・移転した。開館当初はあまりの人気で、約21万冊あった当時の蔵書では心もとなく感じるほどだったそうだ。平成4(1992)年に設置した利用者用の検索端末は、その10年後には各公民館にも置かれ、市民が自分の住む地域から蔵書を探し、予約までできるようになった。
昨年度は、20万人余りが来館し、約30万冊を貸し出した。今も多くの市民に愛され続けるのには、常に来館者のニーズに沿えるよう、蔵書を管理する司書たちのたゆまぬ努力がある。「ただ貸し借りする場ではなく、人と知識をつなぐ橋渡し役だと思うんです。新たな本との出会いがつくれるように、定期的な企画展示にも力を入れています」。主要な文庫・新書13レーベルの新刊を全て購入する「全点買いコレクション」も同館の売り。山岳や湧水、ジビエなど、本市に関係する本の収集にも努めている。蔵書が増えていく中、除籍も進めながら、適切な収容数を維持しているという。
「じかに本に触れられる場所だからこそ、コロナ禍には苦労もありました」。令和2(2020)年には、3月から3カ月にわたり休館。休館が明けた後も、返却された本は一冊一冊消毒していたという。新しい生活様式への対応が求められる中、令和4(2022)年に誕生したのが、書籍をデータ化した電子図書館。インターネット上でいつでも書籍が閲覧できる。今では書籍数も1万冊を超え、市内の小・中学校合わせて16校で、朝読書の時間などに活用されているという。
入れ替わる蔵書や展示、利便性の向上など、図書館は日々変化を続ける。「市民の皆さんと一緒に成長していくのが、図書館です」とほほ笑む古田主事。司書たちが用意した〝新たな出会い〟を求めて、足を運んでみれば、きっとまだ見ぬ知識の旅に出られるはずだ。
■図書館 秋の読書週間イベント
◇企画展示
とき:10月25日(土)~11月9日(日)
《東海大学生作成パネル展》
内容:図書に関するパネルや関連図書
《わたし・みんなのお気に入り絵本》
内容:長い間読み継がれてきた絵本
《広報紙などでたどる秦野の40年》
内容:「広報はだの」のバックナンバーなど
◇特別イベント
《図書館クイズに挑戦しよう》
本を借りてクイズに答えると、記念品が当たる抽選に応募できます。
とき:10月25日(土)〜11月9日(日)
対象:小学生以下
《ビブリオトーク「おとなの絵本クラブ」》
とき:10月25日 午後2時~3時
内容:お薦めの本を持ち寄り、互いに紹介
対象:16歳以上6人(申し込み先着順)
《やまさんを紅葉させよう》
とき:10月28日(火)~11月24日(月)
内容:本を借りた方に配布した色紙の葉を、パネルに貼付
◇おはなし会
(1)おはなしでてこい
とき:11月1日(土) 午後2時~2時半
(2)おはなしぷりん
とき:11月2日(日) 午前10時半~11時
(3)赤ちゃんといっしょのおはなし会
とき・対象:11月7日(金)
・午前10時~10時40分 1歳以下と保護者
・午前11時~11時40分 1〜3歳児と保護者
内容:読み聞かせとわらべうた、乳幼児向け絵本の紹介
(4)おはなしアリス
とき:11月8日(土) 午後2時~2時半
定員:
・(1)(2)(4)15人(当日先着順)
・(3)各回7組(申し込み先着順)
◇映画会
とき・内容:11月9日(日)
・午前11時~11時半 「それいけ!アンパンマン」
・午後1時半~3時半 「じんじん~其の二~」
定員:いずれも60人(申し込み先着順)
問い合わせ:図書館
【電話】81-7012