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〈特集〉今に生きる報徳の教え(2)

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神奈川県秦野市

■「金次郎さんの功績や教えが100年先も語り継がれる、そのきっかけになれれば―」

はだのふるさと大使
合田雅吏さん

profile
昭和45(1970)年生まれ。東小学校、東中学校を卒業。学生時代から男性ファッション誌「メンズノンノ」などのモデルとして活躍し、平成7(1995)年「超力戦隊オーレンジャー」でオーブルー役として俳優デビュー。平成15(2003)年から22(2010)年までドラマ「水戸黄門」に5代目渥美格之進(格さん)役で出演。主演を務めた映画「二宮金次郎」は、令和元(2019)年の公開以降、現在も全国各地の市民会館や公民館などで上映され、好評を博している。

映画「二宮金次郎」でその生涯を演じるなど、金次郎と深い縁がある合田さん。今も心に残る彼の教えや、基調講演の講師として臨む、報徳サミットへの思いを聞いた。

●映画が紡いだ金次郎との縁
「オファーを受けた時は、実在の人物を演じるプレッシャーが大きかったです」と当時の思いを語る合田さん。当初は、学校で像を見たことがある程度で、多くの村を救った功績までは知らなかったという。
約1年の準備期間中に金次郎の生家を訪れ、知見を深めただけでなく、手作業での田植えや稲刈りにも挑戦した。「資料だけでは感じ取れない、当時の人たちの苦労や喜びが役作りのヒントになりました」。報徳の教えを広めた安居院庄七と草山貞胤が自身と同郷であったことも、大きなモチベーションになったそうだ。

●金次郎の人柄と「一円融合」
金次郎を「情熱と行動の人」と表現する合田さん。ぶれない芯の強さと自らが率先する姿勢があったからこそ、人々を巻き込み、村を復興に導けたのだと考えている。「カットにはなりましたが、村人と衝突する金次郎さんを妻がなだめるシーンも好きですね」。信念が強いだけに、頑固でもあったはずと笑みをこぼす。
そんな金次郎の教えで、特に合田さんの心に残っているのは「一円融合」。彼を演じてから、仕事での考え方が変わってきたという。以前は、監督や演出家と演技に対する意見が合わず、何とか説得しようとすることもあった。「歳を重ねたのもあるけれど、「それも面白いね」って相手の考えを受け入れ、寄り添うようになりました。その方が良い結果につながると思うんです」。個人の問題だけでなく、社会にも通じるこの教え。合田さんは、戦争中の国などが互いの考えや正義を認め合えば、問題が解決するのではないかと思いをはせる。

●今の生活に生きる金次郎の教え
「報徳思想」からも大きな学びがあった。「至誠」と「勤労」は、演じる役に真心を持って向き合い、感情や話し方の癖まで準備を重ね、役の人物として生きること。「分度」は、過度な演出はせず「この人物ならどのような言動を取るか」という節度を設けること。「推譲」としては、得られた知識や経験を、観客や未来の世代に作品を通じて伝えることを意識しているという。
この教えは、社会人であれば成功させたいプロジェクト、学生であれば受験や部活などにも置き換えられる。真剣に目標と向き合って、万全の準備をするだけではなく、「分度」の意識が大切だと合田さん。「自分の力量や立場に見合った行動も重要ですが、控えめになり過ぎるのは良くない。できる範囲の中で高く目標を持つことも『分度』だと思います」。結果として得られた技術や人脈などの財産を、同僚や後輩に共有する「推譲」も忘れてはいけない。

●講師として伝えたいこと
報徳サミットには、関係する自治体の市長や有識者なども参加する。合田さんは、金次郎の演じ手ならではの経験を語りたいと意気込む。「金次郎さんとして生きる中で感じた、後世に伝えたい思いや彼が抱いていたであろう感情を伝えられれば」
一方、金次郎を詳しく知らない人には、まず何をした人なのかを知ってもらいたいと話す。「徳川家康や坂本龍馬のように、誰もが語れる偉人になっていいと思うんです」。教科書で語られる歴史上の人物は、逸話が付き物。映画のエピソードを織り交ぜながら、功績や教えを分かりやすく伝える予定だ。「金次郎さんを身近に感じ、その教えを自分の生活や仕事に生かしてもらうことが目標です。市民の皆さんには、安居院さんと草山さんの出身地であることにも誇りを持ってもらいたいですね」
脈々とつながれてきた金次郎の功績や教え。受け取ったバトンを次の100年に託すことで、人々の人生が豊かになっていく、そんな未来を合田さんは見据えている。

       

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