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〈特集〉祝 市制施行70周年 みんなでつなぐ未来のHADANO(1)

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神奈川県秦野市

70周年記念事業のテーマには、「みんな」という言葉が刻まれた。秦野の未来をつくるのは行政だけでは成しえない。次の10年を作る主役は、この街に関係する全ての「あなた」だ。

●つなぐ人たち
節目の年を迎えたこの街には、市の未来をつくるため活動する団体がある。彼らはこの街をどう捉え、どんな将来を描くのか。世代の違う二つの視線を追った。

◇若人

学生団体E4学生部
嵯峨蒔季代表(18歳)

チリンチリーン―。
昨年夏、盆地を吹き抜ける風が、市内に風鈴の音を響かせた。鈴の下でなびく短冊に刻まれているのは、たくさんの人から集めた、大切な人への感謝の言葉。市内4駅や秦野たばこ祭を会場に風鈴を展示したのは、学生団体E4。主に若者をターゲットとして、街の魅力を発信しようと、市内で活動する高校生や大学生のグループだ。「街の若者たちのコミュニケーション不足を解消するために、『ありがとう』という言葉が会話のきっかけになると考えました」と、同団体学生部の嵯峨代表は振り返る。
風鈴の展示は、彼女たちが毎年行うイベント「インハイ」の一環。5年前に結成した当初は、市内のダンス部や軽音楽部などの発表の場だった。自ら企画・運営し、自分たちで協賛金を集めて経費に充てているというのだから驚きだ。こうしたイベントを企画するのは、市内の若者に、団体の本来の目的へと目を向けてもらうためのきっかけづくりだという。「自分たちが住む街が、どれだけ魅力のある場所か気付いてほしいんです」。市がイベントを開催するのに合わせ、街の魅力を発信するためのブースを出展しているE4。秦野の四季の色に染めたポップコーンを販売したこともあるんだとか。まさに若者ならではのアプローチ。「季節ごとに街のイメージが変わるほどの豊かな自然がありながら、都心からも簡単に行き来できる。本当に素晴らしい環境ですよね」
将来もこの街に「変わってほしくない」と願う嵯峨代表。しかし、放っておいて維持できるとも思っていない。持続可能な街にするために、人口の維持や観光客誘致など、シビアな課題にも目をそらさず、将来を担う若者を増やすことに可能性を見いだす。「若者を呼び込むための仕組みづくりが私たちの役割です」。SNSでの拡散力など、若者ならではの強みを生かしながら、企画を試行錯誤するが、長い道のりだ。「すぐに答えが出てしまったら、私たちの活動は終わってしまいますから」とほほ笑む。E4が若者の関係人口づくりの立役者となる日が、そう遠くはない未来、訪れてほしい。

◎活動を通した人脈づくりも強み

◇大人

記念事業市民企画会議に参加した
北村薫さん(69歳)

記念事業には、市民の声が反映されている。一昨年5月、市は市民の参加を募り、ワークショップを開催。10代から70代まで幅広い世代が意見を出し合った。集まった意見を基に、同年8月から実施したのが、公募市民、学識経験者、関係団体による市民企画会議。秦野らしさを生かした事業の検討と市への提案が行われた。秦野をこよなく愛し、その両方に参加した市民がいる。
「自分が生まれ育った街を見つめ直す機会にしたかったんです」。優しい笑顔で話すのは、今泉地区に住む北村薫さん。常日頃から、地域にある公園の清掃や通学路での児童の見守りなど、地域のボランティア活動にも精力的に取り組んでいる。
かつては大手鉄道グループに勤めていたという北村さん。現役時代は、自宅と会社とを行き来する日々で、あまり地元には目が向かなかったという。定年により一線を退き、改めて秦野の歴史を振り返ったとき、思い浮かんだのは、自身の実家も営んでいたカーネーション農家や、秦野を日本有数の葉タバコ産地として知らしめた耕作者たち。「私も生まれ育った街のために何かせねば」と一念発起したそうだ。「私が好きなこの街の豊かな自然も、先人たちの努力で守られてきたんだと感じました」
会議の中で、学生や移住してきた人たちの意見を聞き、新たな発見もあったという。「山があって、水がおいしい。富士山も見える。どれも当たり前ではなかったのだなと」。秦野の持つ魅力の貴重さに気付き、より多くの人に楽しんでもらうための環境づくりが必要だと感じたそうだ。
議論を深める中で、もう一つ気が付いたのは、この街が多くの人の手で支えられているということ。市の一大観光イベントである秦野たばこ祭でも、あちこちの会場で多くの団体が催しを行うことで成り立っていることに、人のつながりの貴重さを感じたそうだ。「祭りに限らず、あらゆる場面で協力し合えば、もっと住みよい街になりますよね」。北村さんが思い描く未来の秦野では、市民同士が手を取り合っている。

◎記念事業のテーマも検討

       

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