市が誇る一大観光スポット、表丹沢。本格的な登山だけにとどまらないこの魅力たっぷりのエリアの楽しみ方を熟知するのが、11人の「OMOTANガイド」だ。今回は、そのうちの2人が教える独自の楽しみ方を紹介する。
■OMOしろい 五感を使った癒やし体験
柳川地区、山並みを背景に広がる田園風景の中に立つ一張のテント。その横でヨガをしているのは、五感を使った集中状態「マインドフルネス」のエキスパート、白井剛司さんだ。「都心から近くて、本格的な自然が楽しめるところは他にないですね」と表丹沢の魅力をアピールする。2年半前、コロナ禍をきっかけに、心身ともに健康であることが大切だと感じ、家族で秦野に移り住んだ。
この日体験したのは、過去の失敗や将来の不安といった、ストレスの原因から離れ、今の自分と向き合うことができる瞑想。通常は室内でイスや床に座って行うそうだが、白井さんのスタイルは、田んぼや畑に寝そべるのが基本だ。「まずは音に集中してみてください」。始まりを告げる鐘「ティンシャ」の音を合図に目をつぶると、静かな環境の中でも水の流れる音、草が揺れる音、鳥のさえずりなどが聞こえてくる。「自然が放つ不規則で多様な音には心身を癒やす効果があるんです」という通り、体が少しずつ軽くなるような感覚を覚えた。
同じ自然の中のリラクゼーションに森林セラピーがあるが、大きな違いは、一切言葉を発しないこと。ひたすら目の前の自然と自分の内面に集中することで、ストレスを解放しやすくなるんだとか。
ティンシャの音で再び目を開くと、なるほど頭がすっきりしたことが分かる。「慣れてくると、自らの精神状態がよく分かるようになりますよ」。雑念を消し、心をクリアにすることで、集中力や記憶力が向上するそうだ。
身近に触れられる表丹沢の自然に感動し、サラリーマン時代から続けていたマインドフルネスと自然のコラボレーションを思い付いたという白井さん。「ここで体感できるのは、山や川、森、田んぼ、畑に囲まれながらの心と体のリフレッシュです」と語る。仕事などで忙しくしている人こそ、一度体験してみれば、ここでしか味わえない癒やしや気付きを得られるはずだ。
(1)ティンシャを鳴らす白井さん。音にはリラックス効果も
(2)白井さん一家。妹の渡邉雅代さん(写真左下・53歳)もOMOTANガイドの一人
(3)収穫後の田んぼの上で寝ながらの瞑想。座るよりも姿勢を気にせず集中しやすいんだとか