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スーっとかすかな摩擦音を響かせながら、真っすぐ目が通ったヒノキの側面を、なでるように鉋(かんな)が通る―。市内の大工が手に持つ鉋から現れたのは、透き通るほど薄い「削り華」。その薄さこそ、まさに匠の技といえる。
■「木を買わず山を買え」
法隆寺と薬師寺の修理・再建で名をはせた宮大工棟梁(とうりょう)が残した言葉。木の質は土の質に影響され、木の癖は山の環境が作り出す。
丹沢山地をはじめ、市域の約52%を森林が占め、良質な木材が生み出されるここ秦野に、来月、全国から熟練の大工たちが集う。培った鉋の「技」を武器に、千分の1ミリメートル単位でしのぎを削る「全国削ろう会秦野大会」の開催へ向け、地元の大工や林業界は思いをたぎらせている。