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〈特集〉技の祭典(1)

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神奈川県秦野市

本市での開催は14年ぶり2度目となる全国削ろう会。大工の優れた技術や秦野産木材の魅力を、間近で感じることができる。訪れる人に感動を届けるため、準備に携わる大工らは、鉋の刃を研ぎ澄ましている。

■「引けば削れるってイメージがあるでしょ?これでなかなか奥が深いんです」


◎第40回全国削ろう会秦野大会招致・実行委員会
中西拓実行委員長(44歳)

◎Profile
幼稚園の卒園アルバムに書いた将来の夢を追い求め、18歳から大工の道へ。昨年1月に独立。昨年、秦野名水復活宣言20周年に合わせて行われた、「弘法の清水水屋更新プロジェクト」の施工も担った。

水無川の上流、堀山下地区にある作業場に、今大会にひときわ強い思いで臨む大工がいる。「一人でも多くの人に、木のぬくもりを届けたいんです」。額に汗をにじませながら鉋を引くのは、中西実行委員長。市内では若手となる実力派の大工だ。小学校の机の天板や市役所の前に置かれたベンチなど、これまでに市内にある数多くの木製品を手掛けてきた。
「鉋は奥が深いですよ」。中西実行委員長も出場するという薄削り競技は、ミクロン(千分の1ミリメートル)単位の薄さを競う、まさに「こだわり」の世界。いくつもの鉋を持ち込む人や砥石(といし)の番手(粗さ)を細かく分けて刃研ぎをする人もざらにいる。鉋の木製部分を調整するための鉋もあるんだとか。
上手い人は3ミクロンを下回るという匠たちの薄削り。昨年出場した糸魚川大会では、記録8ミクロンで悔しい思いをしたという。「リベンジしたいです」と、今大会へ闘志を燃やす。
そんな素晴らしい技術が集まる大工界だが、時代の流れは逆風となって吹き付ける。家造りは、標準化された建築材でコストを抑えられるハウスメーカーが主流に。個人の大工も減少傾向だ。今大会も、市内の大工の出場者は数えるほどしかいないという。「一線で活躍していた大工たちも、高齢化で次々引退してしまいました」
若手の人材が求められる中、多くの人が訪れる今大会は、業界に興味を持ってもらういい機会。地元の木材が使われることで、特に「秦野産木材を使った大工の仕事」に魅力を感じてもらうことを期待する。「大工目線でもいい木材ですからね。私ももっと秦野の木を使って仕事がしたいと思っていますよ」と目を細める。
まずは木と触れ合うことが、大工への興味の入り口。その可能性が今大会には詰め込まれている。会場を包むヒノキの香り。削り華の触り心地。鉞(まさかり)の刃が木の表面をカツーンカツーンと削り取る音。中西実行委員長は五感全てで楽しんでほしいと話す。「初めて見るものばかりだと思うので、ぜひ足を運んでみてほしいです」


◎中西実行委員長が修繕した弘法の清水の水屋。「最初にお世話になった親方が手掛けた作品なので、感慨深かったです」と話す


◎こだわりの手工具。使い込まれた形跡が職人を感じさせる

(1)やり鉋の実演。飛鳥時代から使われている伝統的な工具なんだとか
(2)鉞を使って木の表面をならす「ハツリ」の実演も
(3)通常より大きな一尺鉋も登場
(4)削り華のプールに子供たちも大はしゃぎ
※詳細は広報紙2ページの写真をご覧ください。

問い合わせ:
・産業振興課
【電話】82-9646
・森林ふれあい課
【電話】82-9631

       

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