「女性と子どもが住みやすいまち」への第一歩となった、昨年11月の産科有床診療所「アクアベルクリニック」の開院。妊娠・出産から子育て期まで、切れ目のない支援による「安心して産み育てられる環境づくり」に向け、周産期医療や産後ケアに携わる2人をお迎えして、市の取り組みや今後の展望について語り合いました。
■待望の市内での分娩再開
高橋:明けましておめでとうございます。日頃より、「安心して産み育てられる環境づくり」にご尽力いただき、ありがとうございます。
昨年の「アクアベルクリニック」の開院は、平成27年に秦野赤十字病院が分娩を休止してから、8年越しの悲願でした。
山下:産科医療を必要としている秦野市で、地域に貢献できることをうれしく思います。
丸山:昨年3月に民間の産科診療所が分娩を休止してから、市内で出産ができない状況が続いていました。助産院を利用される方からは、伊勢原市の病院に通っていたと聞いたので、市内で開院されたときは安心しました。
高橋:市と葵鐘会は、昨年4月に「女性と子どもが住みやすいまちづくり」を目指して協定を結びました。今後の展望について、どのようにお考えですか。
山下:子育て全体から見ると、出産はごく一部の期間です。産後の子育て期まで含めた環境を整えることを目指しています。まずは産後ケアの整備を進めています。
丸山:産後ケアを必要としている方は多くいますので、市内に新しい施設が増えることは助産師として大歓迎です。
■ママの心に寄り添うケアを
高橋:ひまわり助産院では、すでに市の事業として、訪問型や日帰り型の産後ケアの実施にご協力をいただいています。一方で、産後ケアがどのようなサービスなのか知らない方もいるのではないでしょうか。
丸山:出産後は生活が一変し、慣れない育児への不安や授乳が上手くいかないなど悩みが尽きません。産後ケアは、そんなママに対して、専門家が寄り添いながら行うケアやサポートです。
山下:出産後のサポートが充実していることで、育児休業後の職場復帰など、元の生活にスムーズに戻りやすくなりますから。ひまわり助産院では、具体的にどのようなケアをされていますか。
丸山:子供を見てもらっている間に休みたい、母乳ケアをしてほしいなど、希望する内容は人によってさまざまです。中には、とにかく話を聞いてほしいという方もいますね。日帰り型でも訪問型でも、まずはサポートしてほしいことを確認しています。
山下:丸山さんの産後ケアは、家庭と病院をつなぐ存在です。今後、じっくりとケアを受けたいママと赤ちゃんには病院で宿泊型を提供し、訪問型や日帰り型は助産院を利用してもらえれば、幅広くサポートできると思います。
丸山:宿泊型が利用できるようになれば、必要としている方に勧めていきたいです。ママと赤ちゃんが離れて休んでも安心な環境で、宿泊してもらうことができたらいいと思っていました。
高橋:助産院を利用される方は、どのようなきっかけで来院する方が多いのでしょうか。
丸山:授乳がうまくいかないという相談をきっかけに、産後ケアを案内するケースが多いです。市からの助成があるので、母乳育児に関係なく、「専門家の話が聞きたい」とか「ちょっと休みたい」という方の利用も増えてほしいですね。
高橋:昨年度の市内での出生数は、年間700人ほどです。そのうち、助産院で産後ケアを利用される方はどのくらいいらっしゃいますか。
丸山:私のところでは、1割くらいです。まだまだ少ないと思います。
山下:産後ケアという言葉は知っていても、内容がよく分からず、ハードルが高いと感じているのかもしれません。もっと気軽に利用してもらいたいですよね。
丸山:何でも相談してほしいと思っています。ケア中にママは眠っていただいても構いません。私たちは、頑張っているママを理解し、寄り添うことで、子育てや生きることに対して前向きになれるようなサポートを心掛けています。