災害時に一つでも多くの命を守るため、市が平時から対策を考え準備している「公助」の仕組み。そこに、一人一人の最適な行動と、地域の助け合いが加われば、もっと多くの命を救うことができるはず。「自助」や「共助」のプロの話に耳を傾けることで、「次の100年」へ備えるための糧としていく。
■自助のプロ
東日本大震災の直後、ボランティアのため被災地を訪れたという東江(あがりえ)さん。支援活動の中で現地の赤十字奉仕団が振る舞ってくれた炊き出しに心を打たれ、後に市赤十字奉仕団を設立。今では当時の経験を基に、高校生から高齢者に向けた出前講座を開き、災害時に取るべき正しい行動を伝えている。
毎回、受講者に向けて「非常用持出袋の中には、名前を書いた家族の写真を入れてください」と呼び掛ける。被災地では、汚れた写真を洗い流す作業を経験。「写真が行方不明者を見つける手掛かりになったこともありました」と、当時を思い返し目に涙を浮かべる。
避難行動に関して強調するのは、「実際を想定する」ことの重要性。「非常用持出品の用意は大事。でも、全てを持って避難所まで歩けますか」。東江さんの所属する自治会では、昨年の総合防災訓練の際に非常用持出袋を背負って広域避難場所まで歩いたという。その人に合った物品の量を見極めるためだ。
講座では、血行を良くするための豆知識を度々披露する。中でも薦めるのが、ビニール袋と段ボールで作る足湯。「不安を抱えている人でも、体が温まるとほっとして悩みを話してくれるんですよ」。さまざまな不安が襲う災害時だからこそ、緊張をほぐすことが重要だ。
地震が起きるのが天気の良い日中とは限らない。持出品がぬれてしまったり、暗闇でけがの手当てをしたりする可能性もある。「まずは、日常の中でやってみてください」と東江さん。今年の総合防災訓練では、あらゆる状況を想定し、〝自分に何ができるか〟を考えて臨みたい。
1 トイレットペーパーは避難所生活を清潔に過ごすための必需品。ジッパー付きビニール袋に入れるとぬれずに持ち歩ける
2 足湯の温度は漬かる人に聞きながら調節。ストレスの多い避難所生活でなりやすい不眠症の改善にも役立つ
■共助のプロ
「遠くの親戚より近くの他人」という言葉通り、災害時に頼りになるのが、ご近所さん。その関係性が組織化されたのが、自治会だ。「東日本大震災の頃から、この辺りは大丈夫なのかって不安が強くなっていたんです」。そう話すのは、自治会の防災組織である小原台自主防災会の古家さんだ。昨年、自身が中心となって「防災見直し分科会」を発足。有事の際の備えを強化しようと動き出した。
自治会員251世帯を対象に実施したアンケートで、地区内の2カ所に設置している防災備蓄倉庫を「両方知っている」という回答が、36パーセントにとどまったことに危機感を覚えたという。
まず取り掛かったのは、意識改革。防災通信を発行し、関東大震災の体験談などを通して、防災の重要性を説いた。また、市内の先進事例を参考に、ヘルメットや工具の入った腰袋をセットした「救命ボックス」を地区内10カ所を目指し、まずは3カ所に設置。「最も多く人が亡くなるのは、発災直後の1時間。1分1秒を争うから、すぐに使えるようにしています」
防災備蓄倉庫や救命ボックスの鍵には、ダイヤル式キーボックスを導入。暗証番号を共有して、会員であれば誰でもすぐに使用できるようにした。「災害が起きても、助け合って生き延びられるのが人間。いざ助けたいと思ったとき:のための環境づくりが、今の僕の役割ですかね」とほほ笑む。「うちでもやりたい」と思った自治会は、まずは一度、地域の防災課題を洗い出してみては。
1 救助活動用の資機材が5人分セットされている救命ボックス。最終的には地区内の10カ所に設置し、25世帯に1台使える体制を目指す
2 急な坂道が多い小原台地区。崖崩れで避難経路が断たれる懸念も、防災力強化のきっかけに
◆9月3日(日) 総合防災訓練に参加しよう
4年ぶりに、合同訓練や避難所の開設など実践的な訓練を開催します。
とき:午前9時~正午
※訓練の開始は、防災行政無線と緊急情報メールでお知らせします
ところ:自治会避難場所、市内小・中学校などの広域避難場所
※東中学校では、消防や自衛隊などとの合同訓練を実施します
◯家庭でできる 防災備品物品・非常持出物品の確認
災害時に備え、備蓄しておく物や持ち出す物を確認してください。食品などは消費期限も確認しましょう。
《用意する物品の目安》
・防災備蓄用品
1週間分の水・食料、衛生用品(ウエットティッシュ、マスク、トイレットペーパー、歯ブラシなど)、生活用品(ごみ袋、カセットコンロ、懐中電灯など)、携帯トイレ、救急用品、乳幼児用品など
・非常持出物品
飲料水、食料(カップ麺、缶詰、ビスケットなど)、貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)、救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)、ヘルメット、軍手、懐中電灯、衣類(下着、毛布、タオルなど)、衛生用品(ウエットティッシュ、マスクなど)、乳幼児用品など
◆地域の絆が共助の要 自治会に加入しませんか
地域の「顔の見える関係」づくりが、いざというときの支えになります。自治会に加入して、地域のつながりを育みましょう。
加入方法:下のURLから電子申請または住んでいる地域の自治会長や役員に連絡
※連絡先が分からないときや自治会についての相談は、市役所西庁舎3階市民活動支援課へ
【URL】https://dshinsei.e-kanagawa.lg.jp/142115-u/offer/offerList_detail.action?tempString=jitikaikanyu
問い合わせ:市民活動支援課
【電話】82-5118
問い合わせ:防災課
【電話】82-9621