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[新春特集]「画」が表現する世界(2)

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神奈川県秦野市

■漫画家 谷口菜津子さん (千村出身)

[Profile]
渋沢小・中学校卒業。昨年、『今夜すきやきだよ』(新潮社)と『教室の片隅で青春がはじまる』(KADOKAWA)が第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。『今夜すきやきだよ』は今月6日からテレビ東京系にて実写ドラマ化。イラストレーターとしても精力的に活動中。

▽当たり前だった里山の風景
『今夜すきやきだよ』聞くと心が躍りだしそうなタイトルの漫画が、昨年の第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。漫画の作者は、谷口菜津子さん。人が抱える悩みや現代のさまざまな問題などを、食事のシーンを交えながら、柔らかな線と表情豊かな絵で表現している。
そんな谷口さんが「画」の世界に進もうと思ったのは、小学生の頃。当時から絵を描くのが好きで、1人でよく頭高山に登っていた。山や植物が特に好きというわけではなく、「家の周りに当たり前にあったのでよく絵にしていたんですよ」と当時を振り返る。その頃から、絵を描く仕事をしたいと漠然と思ったんだとか。
美術大学への入学を機に秦野を離れたら、秦野が自然豊かだったことに初めて気付いた。「秦野は好きとか嫌いとかではなく、自分の一部のような感じ。今では、インターネットでよく秦野の風景を見ています。どこかほっとするんですよね」と懐かしそうに目を細める。

▽最後は「幸せな結末」へ
学生時代のことを思い出そうとすると、人間関係で辛かったことばかり思い出してしまうという谷口さん。それでも「そういった思い出が漫画の創作につながっているんです。面白いですよね」と笑顔で話す。
谷口さんの作る物語は、自身の生きづらさの経験や、普段の生活で疑問に思ったこと、友達と意見がぶつかった時などの反省から生まれているという。『今夜すきやきだよ』のストーリーも、女性3人でルームシェアをしていた当時、意見が対立したり、生活リズムが狂ったりと1人暮らしよりも大変だったという経験から生まれた。「ぶつかり合うことで自分では分からなかった気付きがあった。勉強になりました」
ポジティブで誰かの役に立つものを作ることを大切にするという谷口さんは、自身や友達が経験した「生きづらさ」のエピソードを、漫画の中で見事にハッピーエンドに変えていく。「常識に縛られて生きづらさを感じている人の役に立ちたい。それで共感したと言ってもらえるのがとてもうれしいです」
今のお気に入りは公園なんだそう。「子供の頃は遊ぶだけの場所が、大人になると休んだり本を読んだりといった息抜きの場所になっている。目の前で繰り広げられる人間模様が楽しいですね」とこれからの構想に目を輝かせる。
漫画の中で思わず描いてしまうのは、山の風景や坂道からの街の景色。「盆地育ちだからなんだろうな」と谷口さんは笑う。秦野での経験などを基に作品を作り続けている、そんな谷口さんから生み出されるストーリーと「画」の世界に、あなたも触れてみてはいかが。


(1)第60回秦野丹沢まつりのパンフレット用に描き下ろされたイラスト「記憶のなかの八重桜」。中学校への通学時に見かけた八重桜がモチーフ
(2)エッセイ漫画からストーリー漫画まで、刊行作品は多数。(前列左から)青春群像劇をテーマにした『教室の片隅で青春がはじまる』(KADOKAWA/ビームコミックス刊)、結婚観などをテーマにした『今夜すきやきだよ』(新潮社バンチコミックス刊)、頭高山が登場する、登山をテーマにした『人生山あり谷口』(リイド社)

       

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