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〈特集〉この景色 未来への贈り物

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神奈川県秦野市

平成4年に発足したNPO法人自然塾丹沢ドン会。丹沢の自然保護のため、シンポジウムや学習会の開催、登山道の補修といった活動を行ってきた。平成14年からは棚田の再生活動に取り組み、今年3月、20年にもわたる活動が実り、携わってきた棚田が「つなぐ棚田遺産」に認定された。棚田の復元によってよみがえった里山の自然環境を守り、未来につなぐ人々の思いを紹介する。

●荒れ果てた農地を復元
「活動を支えてくれた地権者や地域の方々に、ありがとうと言いたいですね」と話すのは、自然塾丹沢ドン会理事長の片桐務さん。同会が管理する棚田は、今でこそ手が行き届いた水田が40枚近くも連なっているが、20年前は荒れ果てた場所だった。
地元農家の人たちに米作りの教えを受け、これを縁に名古木の耕作放棄地となっていた棚田を紹介された。伝統的な農村風景である名古木の里山を再生するため、当時20人の会員が、伸びきった雑草を刈り取り、木を切り倒し、復元に取り組んだ。
水田に水を引き入れるために、土のうで水位を上げ、用水路を掘るといった、現在では機械を使うような作業を全て手作業で行ってきた。「台風で水路が崩れたり、サワガニに穴を開けられて水がなくなったりしたことも」と、当時の苦労を笑って話す。
1年かけて7枚の水田を復元させ、翌年には初めての田植えを行った。その時収穫した新米は、いの一番に地権者に届けた。「ある地権者の方が、新米をご仏前に上げて、涙を流して喜んでくれたんです。20年間活動する一番の原動力になりましたね」と力を込める。
米作りなどにより水が流れ、空気が行き渡る環境ができると、かつて生息していた生き物の姿が戻ってきた。平成29年から令和元年までの3年間にわたる自然環境調査では、計838種の生き物が確認された。自然の中に人の手を適切に入れれば、それぞれの環境に適した生き物が生息することができる、と片桐理事長は目を細める。

●次の世代に引き継ぐために
「つなぐ棚田遺産」に認定されたことについて、「棚田の保全や継承活動への期待を強く感じました。思いを新たに、活動を深め、広めていくきっかけにしたい」と喜びを口にする。
会の活動をこれからの世代へ引き継ぐため、平成16年に、ファミリー層やシニア世代が参加できる「丹沢自然塾」を開講した。現在は毎年30組近くの家族が参加している。1年間の自然体験を重ねて、翌年には同会の会員になったり、それぞれの地域でノウハウを生かした活動を行ったりと、同会の活動ネットワークが広がっている。
今年は、会の発足から30年の節目の年。子供たちが自然と触れ合い、遊ぶことができる空間をつくるなど、まだまだ自然保護活動への意欲は尽きない。
「自然塾に参加して身近な自然を感じてもらい、その大切さが広がってほしい」と答える片桐理事長が見据える先には、田植えを楽しむ人々の笑顔があった。

◎NPO法人自然塾丹沢ドン会
片桐務 理事長(72歳・東田原)

▼田植え教室参加者の声
○霜村さん家族(茅ヶ崎市)
今年の4月から参加しています。自然が多いところで遊ばせたいと思い、インターネットで自然塾を知りました。
田んぼが柔らかくて滑りそうになったけど、その感触がとてもおもしろくて楽しかったです。

○濱田達蔵さん(76歳・弥生町)
平成27年から会員として参加しています。自然の中で体を動かしたいと思ったのがきっかけです。
コロナ禍で昨年は実施できませんでしたが、今年は多くの人でにぎわい、いい1日になりました。

◆つなぐ棚田遺産 ふるさとの誇りを未来へ
今年3月、農林水産省が認定した「つなぐ棚田遺産」。全国271カ所のうち、同会が管理する棚田(北側)と、地元農家の関野光治さん(75歳)が管理する棚田(南側)を合わせた計1.75haの「名古木の棚田群」が、神奈川県内で唯一選ばれた。
アクセス:「名古木」バス停から約1.4km
注意:駐車場はありません。見学は公共交通機関を利用してください
※詳細は広報紙2ページの地図をご覧ください。

▼〈参加者募集〉小学生農業体験学習
とき:8月1日(月)~5日(金)午前9時半~正午
ところ:市内の農家
※農家宅へは保護者による送迎
説明会:7月28日(木)午後1時半~ JAはだの本所
対象:小学4~6年生20人(申し込み先着順)
申し込み:往復はがきに氏名(フリガナ)、性別、学校名、学年、保護者の氏名、住所、電話番号、希望日、希望部門(野菜、果樹、花、畜産、茶)の第1~3希望を書き、6月27日(月)までに〒257-0015平沢477はだの都市農業支援センターへ郵送

問い合わせ:はだの都市農業支援センター
【電話】81-7800

▼〈情報提供を〉表丹沢総合ホームページに掲載するスポット
対象:表丹沢エリア(新東名高速道路周辺の里地里山から北側)
※詳しい条件は、市ホームページにあります
内容:グルメ・お土産、宿泊、遊び・体験などに関する情報
※応募された情報は審査、検討後に、夏以降公開予定の表丹沢総合ホームページに掲載します。

募集内容は市ホームページへ

問い合わせ:はだの魅力づくり推進課
【電話】82-9036

問い合わせ:農業振興課
【電話】82-9626

       

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