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〈特集〉歴史をつなぐ中心街(1)

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神奈川県秦野市

昨年答申された3カ所6件の建造物が登録されると、本町地区にある国登録有形文化財は合計で5カ所12件。時代に合わせて街並みは変わってきたが、今も歴史的な建物が数多く残るこの地区の楽しみ方を、その魅力と価値を知り尽くした専門家に聞く。

■本町地区文化財マップ
◯平成29年6月登録
宇山商事 店舗兼主屋

◯平成29年10月登録
五十嵐商店 店舗兼主屋and第1~5号倉庫

◯令和5年答申
旧澤良商店 店舗兼主屋and土蔵1棟

◯令和5年答申
立花屋茶舗 店舗兼主屋and蔵2棟

◯令和5年答申
保全堂薬局 店舗兼主屋
※詳細は広報紙2ページをご覧ください。

■時代の足跡
「それぞれの建物に江戸、明治、大正、昭和時代の痕跡が残っているんです」。そう説明するのは、今回の文化財登録に向けた調査に携わった、建築文化研究所の福田省三代表(81歳・今川町)。昨年15件が答申された県内の文化財のうち、最も古いとされる立花屋茶舗の店舗兼主屋は、江戸時代末期に建てられた。「厨子二階(つしにかい)」と呼ばれる天井の低い造りは、「大名行列を上から見てはいけない」という当時の考えを表すものだそうだ。「改修の過程が分かりやすいのも面白いですね」。明治時代に設置された電話室、皇族の東久邇宮盛厚王宿泊に備えた昭和初期の増築など、時代の変遷が見て取れるという。

■再起の証し
本町地区の建物を語る上でポイントになるのは、大正12年の関東大震災だと福田代表は指摘する。「洋館が多いのは、震災後の流行ですね」。大地震によって大火に見舞われた本町地区。保全堂薬局や五十嵐商店などに見られるモルタル塗りは火に強いとされ、軒を連ねる洋風店舗は復興の象徴的な存在になったという。また、立花屋茶舗は、その頃に行った店舗兼主屋の後退により蔵の前にある庭が狭くなっている。これは、復興に合わせ片町通りの拡幅工事があったことを示している。


◎3年にわたり調査を行った福田代表

■交差する今と昔
かつては、江戸と沼津を結ぶ街道「矢倉沢往還」と、秦野から平塚までをつなぐ「平塚道」が交わる本町四ツ角交差点を中心に栄えた本町地区。歴史を物語る壮観な建物が多い理由は、そこにあるという。「今回の答申に限らず、魅力的な建物がまだまだたくさんありますよ」
一方で、現在市が力を注ぐのは、拡幅と電線類の地中化工事が進む県道705号を中心としたまちづくり。歴史と文化の街に、新たな時代の景観が生まれようとしている。福田代表は、「文化財をうまく活用すれば、相乗効果でにぎわいが生まれるかもしれません」と期待を寄せる。
近代以降の街の歴史と変遷を体現する本町地区の文化財。その全てが、現在そして未来への、過去からのメッセージだ。「歴史をつないでいくことの楽しさを知ってもらいたいですね」。立花屋茶舗には、小学生が見学に訪れることも。「なんでこういう造りなんだろう」と謎解き感覚で見ているそうだ。変わりゆく街並みの中で、彼らのように楽しみながら過去に目を向ければ、秦野の中心街の魅力はもっと深まるに違いない。


(1)店舗裏に設置された明治時代の電話室。当時割り振られた電話番号は「3」だった


(2)東久邇宮が宿泊した立花屋茶舗主屋内の部屋。窓の障子には山水画のような意匠が施されている

       

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